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横浜地方裁判所 昭和58年(ワ)746号 判決 1984年2月27日

原告

高橋英男

右輔佐人

鈴木律子

被告

国府方忠吉

右訴訟代理人

内田邦彦

主文

一  被告は原告に対し、金四一六万円及びこれに対する昭和五八年三月一六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

一請求原因一項(一)中、原告主張の日に主張の金員計四一六万円が原告から被告に交付されたことは当事者間に争いがない。

そこで、原告から被告に交付された右四一六万円が消費貸借契約に基づくものか否かにつき検討するに、<証拠>によれば、原告には女四人、男一人計五人の子供がおり、被告は原告の長女順子の夫であること、右原告の子供達はいずれも独立して生計を営み、原告は十数年前に原告の妻が死去してからは自己所有の肩書地所在の建物に独りで居住していたが、右長女順子及び夫である被告から、昭和五七年一〇月ころ、被告が新しい土地付建物を購入するから同居するよう申出を受け、原告は右建物を直接検分したうえ同居することになり、右建物に一階に六畳の洋間と二階に六畳の和室を増築することになつたこと、右増築費用として金四二〇万円を必要とするとして、その旨を被告が原告に告げたため、原告は昭和五七年一一月ころ、被告の家の裏にある公園で、被告の妻である順子に対し金一六万円を、同年一二月ころ、原告宅で被告に対し、金四〇〇万円の銀行小切手をそれぞれ手渡したが、その際、利息の定めや返済時期等については何ら取り決めがなされなかつたことが認められる。

右各事実によれば、原告は、被告との間に同人が新しく購入する建物に同居させてもらう旨の約束をしたことから、主として原告が使用する建物部分の増築費用は原告において負担するつもりで合計四一六万円を被告に贈与したものであるというほかなく、<証拠>は前記各証拠に照らし採用できない。従つて、原告の金四一六万円を被告に貸渡した旨の主張は理由がない。

二次に、右贈与契約の合意解除の有無につき検討するに、<証拠>によれば、原告は、昭和五八年一月二日ころ、被告方を訪ね一泊し、被告の妻順子に対し、原告の住民票を被告方に異動させたい旨語つたところ、右順子から増築部分ができていないから待つよう断わられたうえ、身体の具合もよくないことから、被告らとの同居に非観的となり、二女の鈴木律子のところへ電話し、被告に金員を貸付けているところそれを取戻してくれるよう依頼し、同月末の日曜日に、原告は二女鈴木律子、三女陵子及び四女明子と共に被告方に行き、被告に対し、前記金四一六万円を原告に返還するよう求め、被告も結局それに応じその返還をする旨約束したことが認められる。右の事実によれば、前記贈与契約は、右時点において、原告と被告間で合意解除されたものと認めることができる。

右の点につき、被告は、被告の真意に基づかないものであり、原告はこれを知り又は知ることができた旨主張し、<証拠>は、右合意解除のされた日は原告と被告らの集つている横浜市○○区○○○所在の被告居宅を売りに出しており買受希望者が右居宅の下見に来るため、取りあえず真意に基づかず右解除の合意をしたものであると供述するが、仮に居宅買受希望者が下見のため被告方に来訪した事実があつたとしても、未だ本件全証拠によつても抗弁事実を認めるに足りないというべきである。

そして、請求原因2(二)の催告の事実は当事者間に争いがない。

以上の事実によれば、原告は被告に対し、前記贈与契約の合意解除による不当利得返還請求権に基づき、金四一六万円及びこれに対する催告期限の翌日である昭和五八年三月一六日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める権利がある。

三よつて、原告の本訴請求は結局理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条を、各適用して主文のとおり判決する。

(澁川満)

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